【ND第1回】はじまりは君の隣で

「ああ、今度埋め合わせするから。うん、じゃあ」

通話を、切る。

「どうしたんだよ、飯岡」

「わたし、あなたのみんなにやさしいところが好きと言ったけど」

自分のローファーの爪先を見下ろす。

何年も履いているけれど、まだはげたところのないことが自慢だった。

「やっぱり、嫌いかもしれないわ。あなたのそういうところ」


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