戦国に埋もれし儚き恋

お父上の剣を持ち出しで怒られたこと…

仲間達と喧嘩をして勝ったこと…

人の庭の木の実を盗んだこと…


そして、お母上が亡くなった時のこと―――

「母の形見は何故か簪(カンザシ)なのです。多分、剣にしか興味がない私に形見の簪を渡すことが出来るほど大切な人が出来るように、と願いと…嫌みを込めてではないでしょうか」

と寂しそうに笑う巧哉様に胸が何故か締め付けられる。
……巧哉様が誰かにその簪を渡す姿を思い浮かべて悲しみが込み上げてくる。


「り、李由姫様っ?!?!」

気が付いたら私は布団を飛び出して…巧哉様に抱き付いていた。ギュッと離されないように…ただ…そうとしか為す術が私にはなかったのだ。


私のおかしな様子に気付いたのか焦っていた先程の声とは全く違う…落ち着いた優しい声で
「どうされました?」
と聞く巧哉様にまた胸が熱くなる




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