戦国に埋もれし儚き恋
四、響くは叫び堕ちるは涙
<side 巧哉>
あれから幾らか日が経ったことか……
あの日、私の腕の中にいた李由姫様は御顔どころか声さえも聞いていない。何度この高い塀に向かって名前を呼んだかも分からない
『李由姫様』
冷たい石に吸い込まれてゆく声が虚しさを増させる。
―――――遠い
深い溜め息を吐くと
「巧哉様?」
『沙菜さん』
振り返ると沙菜さんが浮かない表情で文を抱いていた。
「文でございます」
胸が騒いで嫌な予感がした
「李由姫様からでございます」
受け取る指が震える
「泣いておられました」