戦国に埋もれし儚き恋
コクリと頷く私にフワリと笑みをかけてから旅で見たものや…人々のことを聞いた。
それは物語を読むよりもどこか現実味がなくて、本当に私が生きている同じ世界なのかと疑ってしまう
ずっと聞き役に徹していたのに巧哉様は急に私に
「李由姫様は何を見てきたのですか」
と言うのだ。
自分の見た世界を話そうかと思ったが…話す程もない、狭い世界に躊躇う
「私は幼い頃から剣しか知りません。姫様は何を知っているのですか」
『……花』
「花ですか」
『えぇ、この世界から見ればとても狭き庭に咲いては散りゆく花しか知りません』
桜に目を向け…心の内を話すのは沙菜以外にいなかった。
なのに今、私は初めて会った巧哉様に話そうとしている。
『自由になりたいのです』