この命果てるまで


「……………っ」

 元々、愛されているとは思えなかった。

 両親は互いに愛し合っていた、と思う。

 けど、両親のどちらとも血が繋がっているかは怪しい。

 なぜなら、それは―――……。

「おやぁ。こんな所で何してるんだい、嬢ちゃん」

 突如、上から降ってきた声に、少女は細い肩を跳ねさせ、顔を上げた。

 ―――――闇夜に浮かぶ、月の様な銀色の髪と、同じ色の瞳。

 今まで闇しか映さなかった少女の瞳には眩し過ぎて、少女は小さく目を細めた。

「ほー。黒髪なんて珍しい。………霖国【リンコク】で売られでもしたか?」
「!」

 自分の出身国の名を出され、少女は弾かれた様に顔を上げる。

「お。図星?」
「…………なんなの、あんた」
「俺?俺はねー……暗殺者」

 驚いて瞳を見開いた少女を見て、男は面白そうに笑う。

「へぇ………蒼と黒」

 男の言葉に、少女ははっとして右目を覆った。

 ――――今まで雲に隠されていた月が、少女の蒼い右目と黒い左目を露にしたのだ。

 そう。

 この瞳の色こそが、血が繋がってない証。

 霖国では、蒼い瞳の人間などいない。

 だから、少女の蒼い瞳は暮らしていた村でも異質だった。

 おそらく―――母親が、遊んだ結果だろう。

 霖国の色街には男だけでなく女もまた、楽しめる店が山とある。

「………ふぅん。なぁ、あんた俺と来る?」
「…………え?」



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