以心伝心! 志氣高校 洋将棋部
 冒頭で僕は金が無いと言った。
 
 それは本当である。
 
 一人暮らしの姉のアパートに同居する、という条件で僕は実家から抜け出す事が出来たのだが、そのとき締結された条約の中にかなり厳しい仕送り金額が明記されていたワケだ。
 
 戦争の講和条約も「戦況が有利なときに結ぶべし」とあるように、家族内の協議だってそれに漏れない。
 父、母、姉の三人を敵に回し、しかも三人が三人とも激昂している中、締結されたその仕送り金額が僕にとって有利なハズはない。



 では何故、こんな高校生らしからぬ、朝カフェを演じているといえば――

 「430円になります」

 「あ、これで…」
 僕は“その券”を差し出した。


――その券のおかげであったのだ。
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