以心伝心! 志氣高校 洋将棋部
 エライ差だ。
 深海3000メートルの死闘と、雨降りの廊下。窓は色紙が張られ、ステンドグラスみたいになっている。
 
 無個性なロッカーが壁のように並び、そのうえに誰かのジャージが丸まっていた。

 エライ差だ。
 あまりの隔たりの大きさに、僕自分がどこに向かうべきなのか分からなくなっていた。僕のクラスの女の子が自分のロッカーに、流行のロックバンドのロゴのシールを貼ってくれていなければ、僕は教室にたどり着けないかもしれないぐらいだ。


 「今日は最後まで居たな」
 と、担任は僕を誉めてくれた。
 教室では、もう皆、席に着いていた。
 皆、祭りの後のすっきりした良い顔をしていた。さぞ楽しかったのだろう。


 僕が席に着くのを待って、一日目の反省会が始まった。
 
 客への対応方法について、女の子が積極的な発言をしていた。
 それは明らかにアルバイトで学んだ接客マニュアルに沿ったものだったけれど、その辺を黙認するあたり良い担任だったと言える。
 (いちおう、校則ではアルバイト禁止なのだ)


 僕はその間、マッコウクジラについて、ずっと考えていた。
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