以心伝心! 志氣高校 洋将棋部
 四時半にホームルームは終わった。
 「明日も早めに登校しよう」
 「それで、アレをこうしよう」
 「そして、コレをああしよう」
 そんな事を言って、学級員の男子生徒が締めくくった。

 
 気付くと皆、起立している。
 僕も慌ててそれに習った。
 マッコウクジラがこの光景を見たら、どう思うだろう? 


 
 僕は昇降口に向かう間も、マッコウクジラの事を考えていた。


 ……いや、考えている風のフリをしていたのだろう。

 それはもちろん、あの少女の事を思い出さないようにするためだ。
 
 逃げ出したかったのだ。
 とどのつまりは僕は人との接触を恐れていた。
 
 いつか裏切られる事は分かっていた。結局、人は独りなのだ。
 確かに―――


 「おい!」
 

 確かにあの娘に興味はあった。
 もっと話していたかった。
 それを皆が恋だというなら、そうなのだろう。けれど結局は人は独りじゃないか。
 だったら――


 「おぉい!」
 
 
 「―――は?」

 
 「ナイト、パクるなよ」

 
――ナイト…? ナイトだって!?
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