結婚前夜〜Boy Friend〜《短》
カルーアミルクを五杯。
ジントニックを五杯。
久しぶりにテキーラを三杯。
その間、私とジンに沈黙というものは一瞬たりとも生まれなかった。
それは現在の話だったり。
未来の話だったり。
だけど腐れ縁という関係上、どうしても過去の話になりがちだ。
「なあ、アキホ。お前の初めての相手、覚えてるか?」
この男は突然、何を言い出すのか。
数秒前までは確か、子供に付けたい名前の話をしていたのに。
「覚えてるわよ。一応。ぼんやりと」
だけどジンには何を言っても無駄だ。
話に脈絡がないのはいつものこと。
私は初めての相手を思い出しながら、素直にそう言った。