結婚前夜〜Boy Friend〜《短》

「お前さ。そのときに、俺に何を言ったか覚えてる?」

ニヤつくジンの顔。

その顔を見れば、当時の私がろくでもない事を言ったことはわかる。

だけど、十年近く前の自分の発言なんて、覚えているはずがない。

そんな私の沈黙を正確に理解したジンは、そのニヤついた顔をさらにニヤつかせた。


「“ねえ、なんで腰を振ってる時の男ってあんなに必死なの? 私、笑いそうになったんだけど”
俺、この台詞を聞いてアキホには手を出さないって心に決めたんだよ」

ゲラゲラと笑うジン。

そう言われれば、そんな事を言ったような気もするけれど。


それは仕方ない。

あの痛みを紛らわせる為には、他の事に意識を集中させるしかなかったのだから。
< 7 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop