天国と地獄
やっと出られたんだ!やっと自由になったんだ!


「オギャア、オギャア!!」

「ほら、生まれましたよー!かわいい男の子ですよー」

「オギャア、オギャア!!」


喜びの声をあげようとしても、なぜかオギャア、しか言えなかった。

おかしい。なにかがおかしい。

自分の体を見てみると、それは明らかに生まれたての赤子の体だった。

ちがう、これはぼくの体じゃあない!ぼくは赤ん坊なんかじゃあない!


「オギャア、オギャア!!」

「ほらほら、お母さんですよー」


ちがう、お前はぼくの母さんじゃあない!
ぼくは、ぼくは…!!

暴れても、ぼくより大きな女性が笑いながら押さえつけるだけで、無駄だった。

ぼくは死んで、ぼくではなく、またちがう人として生きなければならなくなったのか?

人にとっての地獄とは、人としての人生を繰り返すことなのか…?


散々走って、わめいて、疲れたぼくはまだ開いてもない目を閉じようとした。
閉じかけたその視界で、新しい母親が怪しく笑うのがみえた。
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