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伸びない雑草
〜伸びない雑草1〜


「また負けた」
「ああ、負けたな」
「原因を追求すべきじゃないか?」
「個々の能力は俺たちのが上だったハズだ」
「じゃあなんだ?総合力か?」

月曜日の夕方、男11人が円を作って地べたに座る。10月下旬ともなると、グラウンドの土は十分冷え、男たちの体温を根こそぎ奪う。1人の男が立ち上がって言った。

「ケンジ、お前はどう思う?」

相変わらずデカい、ケンジはそう思った。身長188センチ、体重90キロ、足のサイズ29センチ、そして俺たちサッカー部のキャプテンであるその男は、その名の通り「デカ」と呼ばれている。本名は確かタカハシいや、タカナシいや……その辺はどうでも良い。

「どう思うって、何がですか?」

ケンジはサッカーボールの「縫い目」を眺めながら言った。

「おい、お前ナメてんのか?1年のクセに生意気なんだよ」

誰かがそうケンジにむかって言った。だがケンジの耳には届いていない。そんなケンジに、デカは改めて問い掛ける。

「なあケンジ、俺たちはここ5試合連敗している。しかも全て0-1だ。お前からみて何が悪いと思う?」

辺りが静まり返った。鈴虫の鳴き声が静寂な中に響き渡る。

「ヘタクソだからじゃないっすか?」

ケンジのその発言は、鈴虫までもが絶句するほどシラケていた。その空気をデカは体格に似合わない口調で割った。

「そんなに俺たちは下手か?」

「下手ですね、ヘタクソです。全く成長してないと思うんです、みんな。春の代名詞である桜じゃない、真夏の太陽みたいな向日葵にもなれない、その辺にあるただの雑草。挙げ句の果てに成長しない。目障りにすらなれない。そんな感じです」

そのケンジの発言に、周りの三年たちは露骨に嫌な表情を浮かべた。次の瞬間、その内の1人がケンジに襲いかかった。突然の出来事であったことと、他の三年の誰もが望んでいたこととが重なり、気付いた時にはすでにケンジは馬乗りされている状態となった。
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