トリッティーの壁から手
*****
シーッと口に指を当てて目配せをすると、近づいてくる足音が聞こえる。
かなり急いでいるようで埃のたたなくなった住宅街に音が反響しては居どころを教えていた。
「一人みたいだな」
大柄の男は隣の長身の男に小さく呟いた。
「そうですね、もしかしたらさっきの子供?」
一時間ほど前にあきらかに逃げていった、ブラウンの髪の少年。
目があっただけで逃げるとは、よほど後ろめたいことがあるのか……それともこちらが嫌われているのか、どちらも心苦しいことだ。
やれやれと大柄の男は首を回した。