トリッティーの壁から手





「君……杖なんて人に向けるもんじゃない」




警官は、焦る様子も見せず真っ直ぐ睨みあげる少年に少しばかりムッとして、掌で杖を払おうと手をあげた時だった




チョン




高い鼻先に杖が接触する。






「何してるんだ?」




大柄の警官が少年に抵抗でもされているのかと心配になり、声をだした。



チャールズも言い様のない不安にかられだんだん警官が心配になった時にことは起こってしまう。











グラリー。




揺れる視界に遠退く意識。




流れ落ちるように倒れていく体を、本人は理解できぬまま冷たい地面に頬をぶつけた。








「アレス!?」



大柄な警官がチャールズの隣で悲鳴をあげる。



目の前で倒れた同僚。



トン、と黒い杖を肩にかけた少年は鍔をつまんでニヤリと笑っている。





何が起きたんだ!?




今、少年の視界に入る警官とチャールズにはこれしか頭にはなかった。



だってそうだろう?



殴ったわけでも薬を嗅がせたわけでもないのに、あんな小さな少年が一瞬で大人の男を倒せるのか!?



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