トリッティーの壁から手



いや、理解できない。



目の前で起こったのに、なにも理解できない。





「あれぇ?この人寝ちゃったね」




わざとらしいほど心配そうに




「風邪引いちゃいけないなぁ、でも自分で寝ちゃったから自業自得かぁ」





くすくす笑う少年。


ぐいっと鍔を引っ張ったせいで顔が見えないが、明らかに笑っているその楽しそうな声色。




チャールズは自由な右手で不安を隠すように自分自身を強く抱いてしまっていた。




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