トリッティーの壁から手
それを手にとると眠りにつけるのだろうか?
バラの中で眠るイバラヒメのように。
リンゴを食べた白雪姫のように。
チャールズは働かない頭でぼんやりそれを手にとってしまう。
目の前の少年が深く口をつり上げたのを目にしても現実には見えなかった。
「ようこそ、トリッティーと彼の部屋へ」
建物がなくなった。
倒れた頼りない警官ももう見えない。
一瞬、線が見えたと思ったのは僕が落ちたからだ。
どこへ?
そんなの解るもんか。
だって、
もう現実かどうかも解らないほど深い深い穴におっこちたんだから。
あぁ、アリスならこの先はウサギがいるんじゃなかったかな?
チャールズはぼんやり物語を思いだしながら、深い深い闇へと落ちていった。