トリッティーの壁から手
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「ねぇ、彼死んだ?」
遠くで声がした。
とても綺麗で涼しい風みたいで、フルートが鳴いたんだと思った。
「死んでないよ、死んでないよ!」
「死んだ死んだ!」
胸の上でむず痒いものがチクチクした。
小さな声で妙に甲高くて……蚊が耳元で羽音を立ててるようで、不快だ。
「そぅ」
残念そうにフルートが音を吐き出した。
「それはとても残念。美味しそうなのに」
「っは!?」
そこでチャールズは勢いよく起き上がった。
美しい音色に潜む殺意にゾッと身をよじって。
起き上がった拍子に胸からコロコロ落ちた粒など、気付きもせず、周りにすぐさま目を動かした。