トリッティーの壁から手



*******






「ねぇ、彼死んだ?」








遠くで声がした。





とても綺麗で涼しい風みたいで、フルートが鳴いたんだと思った。









「死んでないよ、死んでないよ!」

「死んだ死んだ!」










胸の上でむず痒いものがチクチクした。


小さな声で妙に甲高くて……蚊が耳元で羽音を立ててるようで、不快だ。






「そぅ」


残念そうにフルートが音を吐き出した。




「それはとても残念。美味しそうなのに」



















「っは!?」



そこでチャールズは勢いよく起き上がった。


美しい音色に潜む殺意にゾッと身をよじって。



起き上がった拍子に胸からコロコロ落ちた粒など、気付きもせず、周りにすぐさま目を動かした。




< 36 / 92 >

この作品をシェア

pagetop