トリッティーの壁から手
「ねぇね、貴方お名前は?」
「へっ!?」
突然の問いかけにチャールズはすっとんきょうな声を出してしまった。
それもそうだろう、
草原にオレンジティーを染み込ませた夕暮れが迫りかけ、穏やかな風が吹き抜ける、そこに羊飼いが笛の音を鳴らす
また頬をなであげる、そんな幻を直に脳に見せる催眠術に似た女の声色。
チャールズの頭はクラクラして、身体がぞくぞくと震えた。
一声一声に頭の芯が熱くなり、熱を出したように顔が火照るのが嫌でも解ったのだ。
そんな様子のかわいい少年に女はクスクスと喉を鳴らした。
「お名前聞いただけなのに、変なのぉ。それともやっぱりブラウンなのかな」
クスクスくすくす
少年を見下ろせる場所に座る彼女は、長い袖に手を隠してそれで口元を隠す。
どれもこれも、ひとつの動きが絵になってしまう。