トリッティーの壁から手
とにかく、ここから逃げなくちゃ
頭にあるのはそれだけでいい。
チャールズの目がそっと周りを見渡した。
むずかゆい感覚を覚える壁紙の色に、部屋の半分ほどは意味のない段差が凸凹とつらなっている。
階段にしては高過ぎて、だからといって乱雑に置かれたクローゼットや棚でもない。
そう、ただの段々とした切り立った丘が意味を持たず立っているだけ……。
チャールズのいる場所は平坦な床だが、あの綿毛の女がいる場所は部屋の半分程の高さの床になる。
この部屋は部屋にして部屋じゃない。
だって、あるのは馬鹿デカイベッドに飛び散る枕の羽。
カーペットもない、天井も床も全て色をおび……
一輪、花をさした花瓶がひとつ。
窓辺へと飾られていた。