トリッティーの壁から手
ひとりでに沈んでいく少年の体。
眉間にしわを寄せて痛い痛いとわめき散らしていた。
チャールズも何故だか眉間にしわを寄せた。
チャールズは決して、目立つほうでも勇気のある少年でもない。
しかし、寝転ぶ女に姿の見えない者も合わせて三人はいるはずなのに、誰も痛がる彼を助けようとはしないのだ。
知り合いだからなのか、いつものことだからなのか、あれぐらいしないと聞かない馬鹿な少年だからなのか、そんなのチャールズは知らない。
だって、ついさっき会ったばかりの人間なのだから。
チャールズはむしろ、気づきやすい人間だ。
しかし、必ず他に気づく人がいるからこそ、自分がしなくても動く人がいるからこそ、任せていた。
だが今の状況、誰も動く気配がない・・・。(といっても見えない人がいるが)
目で訴えてみた女は、にっこり微笑む。
微笑んだ瞬間にも叫び声は汚い言葉に苦痛を乗せた。