トリッティーの壁から手
近頃ここら一帯で一人で歩く人間はいない、だってみんな一人で歩いているときに消えてしまったのだから。
おじいさんとおばあさんが並んで歩く姿はいいものだ、だけど背景にある事件が姿をチラチラ見せて微笑ましいその姿さえどこか悲しいものになる。
路地の階段で一息つくことも、友達と別れて家に帰る道も、ひとたび目が届かなくなれば闇が待っている。
そう、誰かがこちらから見えない場所で見ている。
なにを欲しがるわけでも要求するわけでもなく、人間が5人、この町、この一帯で消えていた。