トリッティーの壁から手
「ありがとう、チャス!」
目を見開いて、黒髪の少年を真っ直ぐチャールズは見つめた。
彼の目の前には、顔一杯に口角をあげ、歯を見せて笑った少年が至極嬉しそうに礼をのべたのだ。
「あ、あぁ……」
チャールズは今までのもやもやした考えが一瞬で消え、屈託のない笑みをみせる少年に内心驚いていた。
その向けられる見えない好意が、あまりにきれいに見えたから
やましいことは一切ないという笑顔にみえた。