トリッティーの壁から手
「今晩は、急いでお出かけかい?」
「だれ!?」
僕は突然投げられた言葉に、勢いよく声のした後方に振り返った。
見るとそこには、古めかしい紳士の格好をした、同い年位の少年がたっぷりの笑みを作って杖をついているのだ。
スーツの裏地に赤と緑と黄色のドット柄がよく目立っている、変な作りだ。
おまけに首に巻くスカーフも赤、スカーフを留めている丸い飾りが小さいながら魅力的に輝いている。
「ありゃぁ、挨拶も返さないなんてひどいなぁ」
わざと肩をすくめてみせる少年は明らかに嫌みを含んでいる。