防衛要塞都市
敵は、仲間の死に影響されたのか、その数分後に現れる。


倍率の低いスコープで北北東を見回していたセイルは、瓦礫の裏に素早く回り込む敵影を目撃した。


「敵確認。」


安全装置を外しながら短くそれだけ言うと、倍率の高いスコープに切り替え、その瓦礫だけを見つめる。


数十秒経ってから、敵が瓦礫の上部から少しだけ顔を出して、こちらを伺っているのが見えた。


息を大きく吸って、全神経を彼の腕に集中させる。


引き金が、セイルの人差し指に入れられた力に負けて、ゆっくりと手前へと引かれていく。


弾丸は一瞬でビルの屋上から敵兵の頭部まで達し、そのまま地面に突き刺さった。


『北北東部隊、残り一名。幸運を。』


ルイーズの声がイヤホンから聞こえ、彼が敵兵の死亡を確認したことを知る。


それを聞いた途端に、セイルは顔を俯け、深くため息を吐いた。
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