防衛要塞都市
「人に『代わり』なんていないと思います。」


数分間の沈黙の後、アマリリスは優しく始めた。


「誰もが1人の人であって、『代わり』なんて存在しないんです。」


雨が一粒、セイルの頬をかすめた。


「だから私、思うんです。人はいつも、誰かの心の中に生き続けられるって。死んでしまっても、それで終わりじゃないんだって。」


そして段々、雨足は強まって行く。


「・・・何が言いたい?」


セイルは、低く、唸るようにそう言った。


「つまり、私は、あなたに言いたいんです。」


一拍置いて、彼女は告げる。


「大丈夫、泣かないで・・・と。」


実際に、セイルの頬に流れるのは、雨だけではなかった。
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