モウ スキジャナイ
逃げる
「どういうことだよ!」

後ろから望が怒鳴るように言った。
私は怖くて振り向けなかった。
望が近づいてくるのがわかって、私は走り出した。
傷つけたのは私なのに私はそれを認めたくなくて走り出した。

電灯が頼りないこの坂道を私はいつも望と歩いていた。

なのに今は望を振り払うために必死に走っている。

また望が叫んだ。

「好きじゃなくなったってどういうことだよ!」

私は怖かった。望が私に怒っていることが怖かった。
私は臆病だ。悪いやつだ。勝手だ。

望とむきあうのが怖い。

自分の息遣いが荒くなるのが分かる。走るのは得意なのに。

望も辛そうだ。

もうどれだけ走っただろう。

いつも乗る駅にも行かず私はただ走った。

後ろから望が叫んだ。

「俺はまだお前が好きだ!」


その言葉に反応せずにはいられなかった。

私は足を止めた。
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