モウ スキジャナイ
望はきょとんとした。
どんなときも私は大人であろうとした。

望を子供だなと、よく思った。でも …悔しがったり…寂しがったり…嬉しがったりなんて行為を大人が大袈裟にしてはいけないなんてことはない。

その素直さは…

とてもとても慈しむべきものなのだ…







私にはお兄ちゃんがいる。

両親はお兄ちゃんに愛情を注いだ。
きっとそれで使い切っちゃったのだろう。

私にはあまり愛情を注がなかった。

授業参観はお兄ちゃんのだけいくし、ただいまといってもおかえりが帰ってこないのでもうただいまを言わなかった。

食事はちゃんと私の分もでるし、ちゃんとお小遣もくれる。

一番つらいのは誕生日だ。

誕生日にはお金をくれる。

お兄ちゃんにはケーキとプレゼント…

お兄ちゃんは私のお金をみて「いいなぁ」という…

いいはずがない…



だから4月の私の誕生日に望がケーキを買ってくれたときは不覚にも泣いてしまった…

誕生日プレゼントは友達にもらったりするけど…一緒にケーキを食べてくれるその心に泣いてしまった。自分が子供のようで嫌だったのを覚えている。
< 33 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop