マンボウの住む家
なにか知ってる?
そう感じたが、今の俺にはそれを海斗に伝える術をもたない。
それに現状は逃げることが最優先だ。
浮かんだ疑問を一旦奥深くに押し込んで、走ることだけに全神経を集中させた―――
幸い謎の男を巻くことに成功した俺達は、ゼーゼーと荒い息を上げながら額から溢れる汗を乱暴に拭った。
本気で走ったのは久しぶりだ。体育だってこんな全力で走らない。
「はぁはぁ……なんとか逃げ切ったな……」
息も絶え絶えに海斗が言う。
「幼稚園ももうすぐそこだな。念のためちょっと辺りを見てくるから、その間お前は芽衣ちゃんを連れてさっさと帰れ」
海斗の提案は嬉しいが、それでは海斗が危険だ。