マンボウの住む家
いくらマンボウのインパクトが強くとも、数年経てば完全に忘れるだろう。写真など形に残っていなければ。
「宙」
哀愁を帯びた声。
そっと俺に近づくとマンボウのヒレが伸びる。
そのヒレで俺の身体を包もうとしたので、咄嗟に後ずさりしてそれを回避した。危ない危ない。
マンボウは頬を膨らませて不満げな態度をとる。
「なんで逃げるのよ! 親子の感動的な抱擁シーンを!」
その身体ぬめり気がヒドイから触りたくないんだよ!
心の中で叫びをあげるが、逆にマンボウの中の何かが弾けたのか、俺に抱きつこうとジリジリと迫ってくる。
あまりにもしつこいし、俺もそろそろ眠くなってきたので台所から包丁を取り出し大人しくさせた。
この異様なテンションの高さは間違いなく母さんだと再認識された。残念ながら。