マンボウの住む家
「お前が宿題忘れるなんて珍しいな。俺の見せてやろうか?」
それは丁重にお断り致します。
塩基配列関係の単純な問題だし、そもそも海斗は化学が苦手だ。
間違った答えを写しちゃ俺が困る。
黙々とシャーペンを走らせていると、海斗がポツリと呟いた。
「なあ宙、お前なんか隠してるだろ?」
思わず顔を上げる。
切れ目の眼差しが、食い入るように俺を見つめている。
な、なぜわかったんだこいつ? しかもさっき会ったばっかりで会話なんてしていないのに。
否定の意味を込めて首を左右に振る。
けれど海斗はニタァと意味深げな笑みを浮かべた。
「ブレザーのボタンかけ間違えてるぞ」