蜜林檎 *Ⅰ*
満ちる月

満ちる月

満ちる月の光が、優しく
夜空を照らす

その瞬きは
見る者の心を奪う。

そんな夜の静寂を打ち破る
ように、明かりの漏れる方
から客のにぎわう声が響いた。

そう、ここは居酒屋「青月」

店の主人、雅也(まさや)は
カウンターで焼酎を手に
ご近所に住む悪友、伊藤の
一人娘のおめでたい結婚話に
花を咲かせている。

その傍で料理を盛りながら
話を聞いている婿の真(しん)

そして、お客様にお酒を運ぶ
長女の百合(ゆり)。
 
「そうか、そうか
 綾ちゃん
 結婚決まったのか」
 
「そうなんだよ」

伊東は、苦笑いをして沈み顔で
お酒を飲んでいる。

そんな伊藤に、真と百合は
おめでとうの言葉を告げた。
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