蜜林檎 *Ⅰ*
杏は、瞳を大きく開けて驚き
樹の瞳を見つめた。

「ほんとうですか?」

「たまに、この辺をドライブ
 したくなるんだよ
   
 原点に戻るって感じかな」

「私の家も
 この近くなんですよ」

その返答に樹も驚き
吸い終わった煙草を
灰皿に捨てた。

「ほんとう、君と俺は
 偶然が多いね
 
 そうだ、ドライブ
 付き合ってくれないかな?
 時間があるなら」

「私なんかがお相手で
 いいんですか?」

「君こそ、知らない男の車に
 乗っていいの」

樹は、また

微笑んでみせた。
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