蜜林檎 *Ⅰ*
「笑ったら、お腹減ったね
 何か食べようか?」

「えっ」

「何かおいしいもの
 食べよ」
   
その時、樹の携帯電話が
鳴って切れた。
 
車を脇に停車させた樹が
携帯を見ると、もう一度
着信音が鳴る。

「ちょっと、ごめん
 事務所からだ」

樹は車を下りてドアを閉め
何か大切な話をしている。
 
杏は、車内で樹の電話が
終わるのを待っていた。
 
数分が経ち、運転席に樹が
戻ってきた。

「ごめん、急に仕事が入って
 今から事務所に行かないと
 ・・・本当、ごめん」

「どうぞ、気になさらないで
 ください
 私も姉に、家で夕食をとる
 と言ってあるので遅くなる
 と心配しますから」
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