蜜林檎 *Ⅰ*
「家までは
 ちゃんと送り届けるから
 心配しないで」

「家の前は細道なので
 駅の前で降ろしてください」

「さっきの川辺の方が
 家に近いよね
 あそこでいいかな」
  
車は、出会った場所に
停車する。

「ありがとうございます
 すごく、楽しい時間を
 過ごせて嬉しかったです
 偶然に感謝しなくちゃ」

御礼を言って車を降りようと
した杏に、樹は言う。

「杏ちゃん
 携帯の番号教えてくれる?」

戸惑いながら、携帯番号を
教えた杏に、樹は

今度、時間がある時に
もう一度、夕食に誘う
と、約束をしてくれた。

「近いうちに連絡できると
 思うから、また
 ここで会おう、じゃあ
 
 今日は、つきあって
 くれてありがとう」

樹は、手を窓から出し
一度振って、車は走り去る。
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