蜜林檎 *Ⅰ*
食卓のテーブルには
美味しそうなおかずと
温かいお味噌汁が並ぶ。
 
椅子に座る杏の傍に、ナナが
近寄ると、杏から甘い香水の
匂いがする。

そう、その素敵な香りは

杏に移った

樹の残り香だった。

「アンちゃん
 いいカオリがする」
 
「えっ、ほんとう
 帰りに、ちょっとデパートで
 ショッピングしたからかなぁ
 いただきます」
 
「何か、買ってきたの?」

「ううん、何も買ってないよ
 仕事が早く終わったから
 ブラブラしてただけ・・・」

「そう、食べ終わったら
 片付けておいてね」

夕食を終えた後、お風呂から
上がった杏が、髪を梳かして
いると携帯電話が鳴る。
 
樹からかもしれないと急いで
電話をとった杏だったが
着信相手は、瑠璃子だった。
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