蜜林檎 *Ⅰ*
「そっか、でもね、アン
 人を好きなる事は
 理屈じゃないんだよ
  
 その人の傍に
 ずっといたい
 
 その人の温もりを
 感じていたい
  
 胸がキュンって
 痛むって事なの
  
 頭よりも、体が動いちゃう
 ってことなんだよ」

そんな恋をしているであろう
瑠璃子の言葉は杏の胸を打つ。

そんな、ある日

家族が揃って、朝食をとって
いると、雅也の大きな声が
家中に響いた。
 
「大阪までライブに行くだと
 ・・・何も地方へ足を
 運ぶ事はないだろう」

杏は、雅也が怒る事は分かって
いたので、全く動じる事なく
ご飯を食べ進め、雅也の顔を
見ないまま話を進めた。

「もう、チケットも取って
 ホテルも決まってるから」

「ユリ
 お前は、聞いていたのか?」

「私もさっき、聞いたところ
 ・・・」
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