蜜林檎 *Ⅰ*
「だって、先に言うと絶対に
 ダメだって言うでしょう
 
 この歳になって、親に
 あれしちゃダメ
 これしちゃダメ
 やめなさい・・・
 なんて言われるの
 おかしすぎるもん
 
 それに、ルリとこうして
 旅行できるのも
 今だけかもしれないでしょう
 ルリだって付き合ってる人
 がいるんだし・・・」

ナナがこぼしたおかずを
布巾で丁寧に拭きながら
百合が杏と雅也の間に入る。

「もう、チケット代も払って
 るんでしょう
 お父さん、今回は
 しかたないんじゃない
  
 それに確か、卒業旅行も
 ダメだって言って行かせて
 あげてないでしょう
 彼氏を早く作れって言うわり
 には厳しいんだもの
 お父さんは・・・」

「わかった、今回だけだぞ
 今度からは、ちゃんと
 先に話すように
 アン、わかったね」

「はい、ユリちゃん
 ありがとう」

二人は、顔を見合わせて
微笑みあう。
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