蜜林檎 *Ⅰ*
その夜、いつものように
お店の開店準備に追われている
雅也と百合は、真が持ち場を
離れた隙に話をする。

「ユリ、心配じゃないのか?
 アンのこと・・・
 奴らのライブを見に
 大阪へ行くんだろう」

「心配なんて
 少しもしていないわよ
 もう、過去の事だもの
 それに、何百人、何千人が
 あの人に恋焦がれているのよ
 一般人には、到底
 手の届かない人なの
 
 アンと彼に、何かが起こる
 なんてありえないもの」

「そうだな
 心配して馬鹿みたいだな
 早く、現実の男に恋して
 くれるといいんだが・・・」

「現実の男の方が危ないわよ」

百合は、笑って見せた。
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