蜜林檎 *Ⅰ*
千里から、ワインの注がれた
グラスを渡される杏。

「ありがとうございます」

千里は、優しく微笑み
博臣が、乾杯の音頭をとる。

「追加ライブ
 がんばりましょう」

お酒があまり強くない杏は
ワインに少しだけ口を付けた。
 
そして、隣に立つ樹を見つめる
と、樹はそのグラスに一度も
口をつけずに、朔夜に差し出す 

「サクちゃん、これ、飲んで」

「イッキ、今日は飲まないの
 ・・・あっ
 何か冷たい飲み物、頼むね」

そう、杏を車で送って行く為に
樹はお酒を飲めないでいた。

その様子に、メンバーの知人の
女性達はコソコソと何かを話し
杏をみつめる。
 
その冷ややかな目線が痛い。

樹と杏の間には、いつの間にか
距離ができていた。

杏は、隣に座る朔夜の何気ない
心遣いのおかげで緊張が
少しずつ解けて、楽しい話に
笑みがこぼれた。
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