蜜林檎 *Ⅰ*
「遅れてごめんなさい・・・」

鏡子は、彼女に声をかけた。
 
「マリア、遅いよ」

まりあは、樹の肩に手をあて
耳元に声をかけて、彼の
隣の席に座る。

そして、杏を見つめる
彼女の瞳は

あの日と同じように
赤く潤んでいた。

「やっぱり、皆が話してる
 アンズちゃんは
 あなたの事だったのね
 この間は、ありがとう」

「いえっ・・・」

あまりにも美しい彼女の笑顔に
魅せられた杏は言葉を詰まらせ
てしまう。
 
「それにしても、アンズちゃん
 色が白くて、お人形さん
 みたいに可愛いわね
 ねぇ、イッキ?」

樹は、微笑んで頷いた。
 
杏は思うのだった、まりあの
美しさには適わないと。
 
樹の方を見つめる彼女の仕草
こうして二人が並ぶとため息
が出る程に素敵で、絵になる。
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