蜜林檎 *Ⅰ*
杏は、意味も判らず
ただ無性に腹が立ってきて
どうしようもなくなる思い
を抑えられずにいた。
 
樹と付き合えるなどと
ほんの少しも思ってなど
いなかった。
 
ただ、彼との食事を楽しみに
ここへ来ただけの事。

それなのに、女性達の杏を
見つめる鋭い目線に胸は痛み
鏡子の言葉に心は掻き乱され

・・・・・・
 
そして、まりあの存在に
この胸が締め付けられていく。

「胸が・・・苦しい・・・」
 
「お客様・・・?」

ウェイターが呼び止めるが
杏はここから早く抜け出したい
一心で、立ち止まらずに足早に
お店を出て、駆けて行く。
 
プライベートルームに戻った
鏡子はメンバーに、用事を
思い出して、杏が帰った事を
知らせた。 

メンバー達は顔を見合わせる
朔夜が樹に言う。

「明日、仕事だったのかな
 なんだか、つき合わせて
 悪かったね」
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