蜜林檎 *Ⅰ*
樹は、杏の腕を強く掴んだ。

「送って行くよ」
 
杏は、黙ったまま首を左右
に振る、そんな彼女の瞳から
大粒の涙が流れているのを
知った樹は、驚き動揺する。
 
杏は、樹の手を振り解いて
また歩き出した。
 
彼は戸惑いながら、優しい声
で彼女に、こう告げた。
 
「ごめん・・・」

杏は、右手で瞳から零れる涙
を拭い歩きながら、樹の方を
見る事無く話した。
  
「イツキさん
 あやまらないでください
 貴方は
 何も悪く無いですから・・
  
 私がただ、変なんです
 
 こうして、外へ出て
 頭を冷やしても
 気持ちの整理がつかなくて
 イライラして、どうして
 こんなに胸が苦しいのか
 何がこんなに悲しいのか
 ・・・・・・
 まったく分からないの」

また、杏の瞳に涙が溢れて

零れた・・・

樹は戸惑う。
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