蜜林檎 *Ⅰ*
男性が窓を覗き込むと

車窓が開いて

女の人の細い腕が

彼の頬に触れて窓は締まり
車は出て行く。

とても、素敵な光景に
目が離せなかった杏の傍に
彼は近づき、顔を覗き込む。

その男性の

サングラスの中の瞳は

見覚えのある人

そう・・・

彼は・・・

「あっ」

大声をあげそうになった
杏の口を手で塞ぐ

ロックスター、樹(いつき)。

「それで、見ないの

 ライブ
   
 もう始まってるよ」
 
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