蜜林檎 *Ⅰ*
ここは、高級ホテルの一室・・
 
彼は今、シャワーを浴びている 

杏は一人、目を閉じ

深呼吸をつく。

高鳴り、早く脈打つ鼓動を
沈める為に・・・

そして、今日だけでいいと
自分自身に言って聞かせた。

今だけでいい・・・

杏は、この場面になり改めて
樹の存在を確認した。
 
これは、夢では無い

彼は目の前にいて

杏に触れる。

優しく髪に触れ

頬に手を翳し

杏を見つめる。
 
その瞳は

狂おしいまでに妖艶で

杏を眩暈が襲う。
 
瞳を閉じた杏の唇に

彼の唇が優しく重なる。
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