蜜林檎 *Ⅰ*
まだ薄暗い、早朝4時頃

樹は、ベッドに深く腰掛けて
サイドテーブルにワインを置き
一人、グラスで飲んでいた。
 
樹の腰元に腕を回し、眠りに
ついている杏の頭を優しく
撫でる。
 
彼の大きな手の優しい動きに
気づき、杏は目を覚ました。

「おはよう」

「おはようございます
 私、いつの間に眠って
 ・・・」

「まだ、早いよ
 もう少し眠るといい」

杏は、樹の隣に座る。

「ずっと 
 起きていたんですか?」

「少し眠ったけど、おいしい
 赤ワインがあったから
 飲んでたんだ
 それに、朝、起きて
 君がいなくならないように
 見張ってた」
 
二人は、笑い合った後

見つめ合う・・・

杏は、樹の大きく鋭い瞳が
大好きだ。
 
その瞳はいつも

どこか遠くを見つめている。
 
彼の瞳の奥に

何が映っているのだろう・・・
 
ずっと、ずっと

それが知りたかった。
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