蜜林檎 *Ⅰ*
杏は、ホッと安堵した。

そのすぐ後に、自宅に連絡を
する事を忘れてしまっていた
事に気がつく。
 

急ぎ鞄の中から携帯を取り出す
と、五回のコールとメールが
一通、届いていた。

「どうしよう・・・」

「心配してるかもしれないね
 今、4時30分前だけど
 連絡してみる?」

メールは、瑠璃子からで

その内容は

杏の姉から杏が帰らないと連絡
をもらったので、お酒に酔って
気分が悪い杏を、今日は瑠璃子
の家に泊めてもいいかと伝え

姉の了解を得た事を知らせて
くれていた。

『帰ったら、ちゃんと
 報告するように。ルリ』

メールを隣で読んだ樹は微笑む
 
「後で、ちゃんとルリちゃんと
 家の人に連絡する方がいいね
 ルリちゃんには、何て
 報告しようか」

樹は、銜えた煙草に火を付け
伏し目がちに煙を吐く。
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