蜜林檎 *Ⅰ*
「分かったわ
 心配するから、ちゃんと
 連絡しなさいよ
 
 お父さんには、私から
 話しておくね
  
 今日は、ちゃんと帰って
 きなさい

 そうじゃないと
 大阪のライブにも
 行けないかもよ」

「うん、わかってる
 じゃあ」

電話を切り、杏はふと
思うのだった。
 
最近、嘘をつき
誤魔化す事が
増えてしまったと・・・

ベッドルームへ戻ると
樹は、まだ眠っている。
 
杏は、無防備で少年のような
その寝顔が愛おしくなる。
 
樹を起こさないように
そっとベッドに横になり
彼の大きな背中に腕を回して
寄り添って眠る。
 
すると、樹は振り返り
杏を胸に抱いて眠る。
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