蜜林檎 *Ⅰ*
そこに、スタッフらしい人が
迎えに来て、誘導の元

裏口から会場内へ憧れの人の
姿は、もう見えなくなって
しまった。

杏はその場にしゃがみ込み
手の震えが止まらない。

過度の緊張で、呼吸は乱れ
胸が苦しい。

少し落ち着いた杏は
握り締めていた手をそっと開き
ライブチケットを見ると
最前列の場所が一枚だった。

杏はそのチケットを落とさない
ように大切に鞄にしまう。

そこへ、遅れた瑠璃子が走って
来て、しゃがみ込んでいる杏に
手を差し出した。

「アン、遅れてごめんね
 気分悪くなっちゃった
 大丈夫?」
 
「うん、大丈夫」

瑠璃子の手を借りて、杏は
その場に立ち上がり
 
そのまま二人は会場へと急ぐ

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