蜜林檎 *Ⅰ*
結局、話をしている時間はなく
杏たちは、薄暗い会場内へ入り
瑠璃子の持つチケットの座席を
探して席についた。

「よかったね
 ライブ遅れてるみたい」

瑠璃子が杏の耳元に呟いたのと
同時に、会場内は真っ暗になる

至福のとき・・・

このドキドキ感が堪らない・・

ファンの歓声が響き、メンバーが
舞台に現れる。
 
ひと際、歓声が大きくなった

その時
 
センターに樹が立つのと同時に
一斉に眩いばかりのライトが
彼に向けられる。

その姿は、漆黒のロングコートに
蘇芳色のシャツが映え

降り立った堕天使のようだった。
 
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