蜜林檎 *Ⅰ*
「アンちゃん
 お願いがあるんだけど
  
 ベッド
 代わってくれないかなぁ?
  
 昔、折りたたみベッドで
 眠ってて、落ちた事が
 あるんだよね
 わたし、寝相が悪いから・・
 ここだけの話ね」

三人は、笑い合う。

「うん、いいよ」

「アン、ほら
 早く電話しておいで」

「ありがとう」

二人が飲みに出かけるのを
見送った杏は、テレビを
見ながら部屋で一人きり
時間を潰して

樹が大阪に到着するのを
待っていた。

見たい番組も無くなってしまった
杏は、テレビを消し静かな部屋で
樹へと思いを馳せていた。
 
するとその静寂を打ち破るように
着信音が鳴り響く。

「今ホテルに付いたから
 タクシーで迎えに行くよ
 そっちのホテルの名前
 教えてくれる、じゃ、後で」

杏は、部屋を出て走る

愛しい人に逢う為に。
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